連載企画【手帳ができるまで】第10回「製本~1.裁ち」

断ち

こんにちは! 長谷川です。
第9回に引き続き、今回も私が担当します。

お題は「手帳ができるまで 製本~1.裁ち」です。
「裁ち」と一言で言っても、じつは製本における裁ちは二つあります。
製本工程の最初におこなう「断ち割り」と、最終段階でおこなう「仕上げ断ち」です。
今回は「断ち割り」のお話。それては参りましょう。

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▼目次

①「断ち割り」とは

②刷り本の状態が品質を決める!

③断裁作業で注意すべきこと

④そして「折り加工」へ

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①「断ち割り」とは

「断ち割り」とは、内容が印刷された枚葉紙(刷り本)を、「折」の仕様に合わせて決められた寸法に断裁することをいいます。

断ち割り

「折り」についての詳細はまた次回になりますが、刷り本は1枚に複数ページ印刷されていることが普通です。これを正しいページ順になるよう折り合わせていく工程が「折り加工」になります。

たとえば、B全判の用紙には、B6判64ページ分の印刷が可能です。一般的なページ物は、1つの折を16ページ単位で構成するので、B全判には4折分が印刷されていることになります。これを折り機にかけられるようにするには、4面に断つ必要があるわけです。

「断ち割り」とはいわば、折り加工のための準備作業といえるでしょう。

 

②刷り本の状態が品質を決める!

ところでこの「断ち割り」ですが、作業前の刷り本の状態が決定的に品質を左右します。
よって、作業前のチェックは非常に重要です。
受領した刷り本は、少なくとも以下のようなことを確認する必要があるでしょう。

① 品名、内容が記載されているか(〇〇手帳 本文〇折 など)
② 印刷数量は記載されているか。予備枚数は適正か。
③ 刷り本の異種混在はないか。面損等が指定されていないか。
④ 山崩れ、水濡れ、パレットからのはみ出しなどによる損傷はないか。

刷り本

その他にも、異常や気になることがあれば必ず上司に情報をあげ、対処を確認することが大切となります。また、写真に撮って記録を残しておくとよいでしょう。
ともあれ、作業にかかってしまった後では、なにを言おうと後の祭りになってしまいますのでご注意を。

 

③断裁作業で注意すべきこと

さて、上記チェック事項をクリアしたら、いよいよ断裁作業です。

枚葉印刷では、基本的に紙の2辺(印刷の針側とくわえ側)を基準に印刷位置が一定になるので、この2辺を揃える必要があります。これを「突き揃え」といいます。
この突き揃えした印刷物を断裁機にセットし、断裁トンボに合わせて裁断を行います。
一度に断裁できる厚さは100ミリ程度が基準です(用紙にもよります)。

作業でまず気を付けることは、「断裁かぶり」です。
「かぶり」とは積み紙を断裁する際、切り口が湾曲してしまうことをいいます。

原因としては、
①断裁機のクランプ圧が紙質に適していない
②ナイフ刃先が摩耗している
などが考えられます。また、紙さばき・エア抜きが不十分であることも原因になります。

原因は必ずしもひとつであるとは限らないので、解決しない場合は断裁機メーカーや研磨業者に問い合わせるとよいでしょう。
刷り本取り扱い時には折れ込みに注意し、刷り本の汚れ・キズ、不良の混在などに注意を払いつつ作業を進めていきます。

突き揃え

 

④そして「折り加工」へ

「断ち割り」が済んだ刷り本は、次に「折り加工」へ送られます。

折加工

「断ち割り」の精度が高ければ、以後の作業もスムーズに進むはず。
それが最終的に美しい手帳につながっていきます。
菁文堂の良い手帳をつくる旅に終わりはありません。

 

ではまた、次回お会いしましょう。